約2900と言われていた与謝蕪村(1716~1784)の句に、新たに212の句が加わった。奇しくも生誕300年の年の発表。

天理図書館外観

10月14日午後1時。図書館2階講堂で開かれた記者発表には、各新聞社、テレビ関係も取材に訪れた。著名な蕪村研究者・藤田真一(関西大学文学部部長)と、天理図書館の牛見正和両氏による説明があった。

記者発表の様子

『夜半亭蕪村句集』は、昭和9(1934)年に一部が紹介されて以降、その所在がわからなかった。その本が4年前、天理図書館に収蔵されることになった。そして、『夜半亭蕪村句集』(1903の句)の中に、新出の句が212あることがわかったのである。

中には、蕪村の筆と思われる朱筆の書き入れや、墨書による訂正記事等がある。

句集はもと、門人の百池が所蔵。百池は京都河原町の大店の旦那。蕪村の弟子として句を習い、蕪村が描く絵を買って、彼の生計を支えた一人である。

蕪村は生前、自らの句をまとめて出版したいという夢を持っていた。しかし、その夢は叶わずに旅立ったという。その後、弟子たちが、書き写していた句会などで蕪村が詠んだ句を、後世に伝えてきた。

蕪村句集展示の様子1 蕪村句集展示の様子2

今回、生誕300年に発表されるこの句集も、百池が句会で書き綴った蕪村の句の結晶である。

今回発表の資料も、天理図書館の「綿屋文庫」所蔵。中山正善二代真柱が『おふでさき』研究のために、立教当時の江戸末期庶民の言葉や生活の様子を窺える古俳書の蒐集に努め、そこに中山家の屋号に因んで「綿屋文庫」と名づけられたのが始まりである。

教祖130年祭前。文化の秋、立教の大祭の旬にあわせて、その「綿屋文庫」から蕪村の新出句が発表されることは、蕪村の生誕300年とあわせて、奇しきものを覚える。

――天理図書館 開館八十五周年記念展 俳人蕪村 生誕三百年を記念して――
10月19日(月)~11月8日(日)まで
天理大学附属天理図書館にて開催
入場無料 くわしくは、下記URLをご覧ください。
http://www.tcl.gr.jp/index.htm

【記事・写真:「陽気」編集部】